巻第十
万葉集 巻第十春雑歌
1873
何時鴨 此夜乃将明「」之木伝落梅花将見 「」はウグイス
いつしかも この夜の明けむ 鶯の
木伝ひ散らす 梅の花みむ
「いつしかも」は 「いつかは明けるだろう」等の曖昧な待望ではない。「当然の様にもうすぐ明ける」疑いの無い確実な事なのです。現代人には理解すらできぬ精神安定度合なのです。
1819
打靡(雨冠に非) 春立奴良志 吾門之
柳乃宇礼尓「」鳴都 「」はウグイス
うちなびく 春立ちぬらし 我が門の
柳の末(うれ)に うぐひす鳴きつ
柳の末に ウレ とは 先 柳の枝先 柳の葉先 の意 です。細い まして春先はなおのこと。
鳴きツ 此のツ(都)は瞬間事実を表す。
鳴きヌ ならば継続状態を。鳴いている。となる。
鳴いたカナ 鳴いた様だ くらいの状態です。 ウレ も ナキツ も非常に繊細です。
万葉集の巻第十辺りは この種の歌が多い。これらは世の中が平和で安定し何の心配もない極楽なよのなかであったはず。西暦520年から531年二月七日までの僅かな時期だけです。